胸骨吊り上げ法(城戸)

胸骨拳上式内視鏡下手術-重症筋無力症の胸腺摘出術に応用

重症筋無力症の患者さんは、胸腺摘出などの従来の外科治療により5年後には4割の方が治り、4割の方が改善するとされています。しかし、手術をしてもまだ6割の方が完全には治らず、治療法がまだ完全でない難治性疾患です。
われわれは、2017年2月現在までに182例の重症筋無力症の患者さんに胸骨挙上式内鏡視下手術法で拡大胸腺摘出(胸腺を周囲の脂肪とともに大きく切除する方法)を行いました。しかし、現在まで2名の患者さんに胸腺の取り残しが手術後に確認されました。この2名の患者さんは再内視鏡下手術により残存胸腺を摘出されています。われわれの方法は、内鏡視下手術のために従来の方法と胸腺切除量で劣ることが考えられ、手術後の改善率が下がることが懸念されましたが、2008年12月現在時点で、平均観察期間が約7年で寛解率16%、有効(寛解と改善を合わせた)率87%と従来の方法と遜色ない手術治療結果がえられています。

長期成績では2007年12月までの患者さん106名の寛解率、有効率はそれぞれ6ヶ月後25%,86%,1年後28%,85%,2年後28%,84%,3年後31%,85%,4年後36%,84%,5年後37%,83%,6年後34%,84%,7年後29%,88%,8年後50%,100%の成績です(図1,2)。
胸腺腫非合併患者さん90名の長期成績での寛解率、有効率はそれぞれ6ヶ月後29%,86%,1年後31%,86%,2年後31%,85%,3年後35%,84%,4年後39%,84%,5年後39%,83%,6年後38%,86%,7年後31%,94%,8年後50%,100%です(図1,2)。
8年間の重症筋無力症患者さん連続110名(内4名が血管損傷や胸腺腫の胸腔内転移のため胸骨縦切開へ移行)の内視鏡下拡大胸腺摘出術の治療成績結果を表と図で示しました(表1.2.3,図1.2.3)。


表1


表2


表3


図1


図2


図3

■欄外の解説

表1:
内視鏡下手術が完遂しえた106名の特徴は、平均年齢38歳、男性23人、女性83人。オッサーマンの病型分類は眼筋型14名、全身軽症型60名、全身重症型32名でした。胸腺腫の合併ありは16名、合併なしは90名でした。
表2:
胸腺腫合併あり(なし)での手術成績指標は、それぞれ平均手術年齢50歳(36歳)、男性4人(19人)、女性12人(71人)、平均手術時間189分(167分)、術中平均出血量104 ml(71 ml)、ドレナージチューブ平均留置期間2.5日(1.5日)、術後平均滞在期間7.3日(6.1日)でした。
表3:
合併症の種類は、左腕頭静脈損傷3名、一過性横隔神経麻痺3名、声帯麻痺2名、術後の筋無力症クリーゼ2名、腹壁瘢痕ヘルニア2名、遺残胸腺2名でした。
図1:
内視鏡下拡大胸腺摘出術全患者さん(106名,図の○)と胸腺腫非合併患者さん(90名,図の△)の経過年数(術後6ヶ月から各年で8年まで)での寛解率を示しています。
図2:
内視鏡下拡大胸腺摘出術全患者さん(106名,図の○)と胸腺腫非合併患者さん(90名,図の△)の経過年数(術後6ヶ月から各年で8年まで)での有効率を示しています。
図3:
私達の外科チームによる全患者さんの患者別手術時間(Actual)を経年的に示しています(太字曲線は移動平均値,Forecast)。最初の1997年から2000年までの21名の平均手術時間181分に対し2005年から2006年までの2年間29例の平均手術時間127分と手術時間の短縮がみられています。
【胸骨吊り上げ法(城戸)】

プロフィール

1951年生まれ。
1977年 北里大学医学部医学科卒業、
同年大阪大学第一外科医員。
大手前病院、奈良県立医科大学、大阪医療刑務所病院法務技官、国立呉病院、大阪府立病院、大阪警察病院呼吸器外科部長、大阪警察病院呼吸器外科客員部長、聖授会OCAT予防医療センター所長を経て現職。
1997年世界で初めて胸骨をつり上げた胸腺の内視鏡下手術を開発。
1999年内視鏡下手術の安全性をより高めるために、ハンドアシストを併用した胸腔鏡下手術法を発表。
重症筋無力症や縦隔腫瘍に対する胸腔鏡下手術の第一人者。
日本呼吸器外科学会終身指導医・特別会員、日本外科学会認定医、日本胸部外科学会終身指導医、日本小切開・鏡視外科学会設立理事、日本医師会認定産業医。

手術・医療相談

全国の医療施設で診断されました肺腫瘍や胸腺腫瘍の患者さんの画像再診断や今後の手術(内視鏡下手術)のご相談を行っています。すでに確定診断されました重症筋無力症患者さんの内視鏡下手術治療法のご相談も行っています。画像再診断や手術法のご相談を承っています。

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