開発した新しい手術法について
1997年と1999年に開発しました二つの新しい内鏡視下手術を紹介、説明します。なお、この新しい手術法は朝日新聞の日曜版紙面でそれぞれ1998年5月3日と1999年11月28日に報道、紹介されています。
胸骨切らないで胸腺摘出手術(1998/5/3 朝日新聞)

胸の中央を縦に通る「胸骨」の裏側にある胸腺と周囲の組織を摘出する手術を、内視鏡で行うことに大阪警察病院の城戸哲夫外科医長らが成功した。
胸腺をとることがある重症筋無力症や胸腺のう腫などの手術に応用できる。胸腺の内視鏡手術は、胸骨に妨げられるため視野が十分でなく難しいとされていたが、器具で胸骨をつり上げるなど工夫した。傷跡も小さいうえ、骨を切らないので早く退院できるという。
胸骨は長さ三十センチ、幅五センチほどで、ろっ骨とともに心臓や肺を守っている。従来は胸骨全体をノコギリで縦に切り、開胸していたが、退院まで二週間以上かかるのが普通で、手術後も長い傷跡が残る。
内視鏡手術では、おなかと胸の間の中央部分を横に五センチほど切開し、胸骨の裏側に金属板を差し込んで胸骨を持ち上げ、内視鏡や電気メスを入れて胸腺を摘出する。城戸医長はこれまで五人に実施したが、重症筋無力症の十代の女性は六日目に退院できたうえ、傷跡もあまり目立たなかったという。(記事原文のまま掲載)
痛みの少ない胸腔鏡手術を開発(1999/11/28 朝日新聞)

胸腔鏡を使った肺がんなどの手術で、患部を取り出すための切開場所をこれまでの胸部から腹部に変え、体内に手を差し込んで処置する方法を、大阪警察病院の城戸哲夫外科副部長らが開発した。従来のやり方に比べて、痛みも少なく、より確実に手術できるという。
胸腔鏡手術は、胸の周囲三、四カ所に開けた一センチ程度の穴から内視鏡や器具を差し込んで操作する。胸を切り開く手術に比べて痛みが小さいという利点がある。それでも胸部にはろっ骨、太い神経、筋肉があるため、痛みが残りやすく、摘出はやりにくかった。城戸さんらは、筋肉や神経が少ない上腹部中央に着目、一カ所を六、七センチ切開して手を挿入する手法を考案した。腫瘍に直接触れて範囲を特定できるなど、短時間でより確実に手術ができる。
同病院で手術を受けた四人の患者は、痛みは少なかったといい、従来の半分程度の術後五日以内に退院した。城戸副部長は「胸腔鏡の負担の少なさと、切開手術の確実さをともに生かせる方法だ」と話す。(記事原文のまま掲載)